私は長年、消化器外科医として手術に携わってきました。
退院後の患者さんの生活、支えるご家族、地域とのつながり……。
「病院を出た後の医療のかたち」を見つめ直す中で、今こうして在宅医療を軸とするメディカルクリニックあざみ野を運営しています。
この道を選んだ背景には、兄の存在があります。
兄は医師であり、東北大学の教授でもありました。自他ともに認める頭脳明晰な人でした。
ある年、定期的にがん検診を受けていた兄が、あるとき肺がんのステージ4で見つかったのです。
すでに末期でした。
検査を受けていたにも関わらず、「異常なし」とされたはずの画像に、実は異変があったのです。
私たちは医師であると同時に人間であり、いくら経験を重ねても「見落とすこと」があります。
そこには疲労もあれば、判断の揺れもあります。
――私はその時、強く思いました。
「命を守る検査に、“俗人的な判断”だけであってはいけない」と。
この思いが、私たちのクリニックでAIを活用した診断支援を取り入れる原点になりました。
当クリニックでは、内視鏡やCTなどの画像診断において、AIによる自動解析を導入しています。
AIは医師とともに画像を確認し、微細な異常や見逃しやすい影を即座に検出し、怪しい部分にマークをつけて可視化してくれます。
もちろん、AIは医師の代わりにはなりません。
しかし、医師の目を“もう一つ”持つことができれば、それは命を守る上で大きな力になります。
兄の死をきっかけに、私は一つの決意をしました。
「自分が兄の年齢を超えた今、兄が得られなかった未来を、ほかの誰かのために守りたい」と。
だからこそ、私たちは**“早期発見に強い医療”**を追求します。
退院後の生活や、自宅での療養を支えることももちろん大切ですが、
もっと前に、もっと早く、“気づく医療”を届けたい。
それが、AIを使う理由です。
技術は「冷たい」ものではなく、人の命を温かく支えるためのものです。
私たちのクリニックでは、兄の命の記憶と共に、
一人でも多くの命に“気づく”医療を届けることを使命としています。
これからの医療は、
“見逃さないこと”から始まる。
どうか、あなたにも届きますように。